「多様な働き方」が広がる背景と法的リスク
「多様な働き方」が広がる背景には、企業の経営負担や社会保険の適用範囲の拡大、そしてライフスタイルの多様化に対応するための「柔軟な雇用形態」の必要性があります。しかし、これに伴う懸念として、安易に選択された雇用形態が法的に適切でない場合や、労働者に対する保護が不十分になるリスクが増加することがあります。
昨今の労働経済白書においても、「多様な働き方」という語句が、まるで当然のごとくサブタイトルとして採用されるようになりました。
終身雇用の確約の崩壊や、人件費による経営への負担増などの背景から、企業界においても、これまでの正社員と完全なフルタイム雇用に固執せず、多様な雇用形態を模索しはじめたのは明白です。
社会保険のパートタイム雇用への適用範囲拡大などの動向は、パート労働の細分化を促進する要因ともなり、今後も多様な雇用形態が同時に共存する状況が続くでしょう。
しかしながら、一つの懸念がつきまとっています。
それは、選択肢をあまりにも安易に選択しすぎているのではないかということです。
企業の長期的な成功に繋げていくために
「正社員とすれば、コストが高騰するため、パートタイムとしよう」「派遣であれば社会保険に入れる必要がないだろうし」「労働者
として雇用せず、請負契約を結んで個人事業主として扱えば、雇用に伴う責任を回避できるだろう」といった考えが、外面的な利点に目が向き、導入にあたって十分な警戒心を欠いているケースが少なくありません。
これまでは、正社員とパートタイマーといった比較的単純な雇用形態であれば、問題は少なかったかもしれません。
しかし、派遣や請負など、直接雇用でない場合には、法律に多くの規定が存在し、法的知識の不足により、不適法な雇用形態に陥る危険性が高まります。
また、パートタイマーを含む契約社員など、有期雇用契約の労働者に対する法的規制にも注意を払わなければ、雇用方法が誤ったものであることに気付かない可能性があるのです。