労働条件・環境

マイカー通勤と交通事故 会社の責任と対策について

交通事故の発生時期と背景

内閣府の「令和3年版交通安全白書」によれば、交通事故の発生件数が最も多い月は12月となっております。次いで多いのが、10月、3月となっています。

その理由として以下が挙げられています。

日が短くなり、日没が早くなるため、薄暮時間帯である17~19時の間に多く発生していること。

業務交通の集中による交通量増加の影響を受けていること。この状況から、マイカー通勤をしている社員が交通事故を起こすことへの心配も理解できるものと考えられます。

会社の責任と法的根拠

では、その場合の会社の責任についてはどうなるのでしょうか?

社員がマイカー通勤途上において交通事故(加害事故)を起こした場合、会社の責任は「使用者責任(民法第715条)」と「運行供用者責任(自動車損害賠償保険法第3条)」が考えられます。

【使用者責任(民法715条)】

事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

【運行供用者責任(自動車損害賠償保険法3条)】

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。

要するに、「使用者責任」では業務上で車を使用していた場合、会社が相当の注意をしていない限り、会社が事故の責任を負うとされています。

一方で、「運行供用者責任」では運転の目的が業務外であれば本人(運転者)、業務上であれば会社がそれぞれ責任を負うとされています。

裁判例と実務上のリスク

「マイカーによる通勤途上の事故」でも使用者責任や運行供用者責任が認められるケースがありますので、注意が必要です。

裁判例では、社員がマイカー通勤で事故を起こし、会社がマイカー通勤を認めており、マイカー通勤手当を支給していた場合、通勤が業務に密接に関連していると判断され、会社側に使用者責任を認めたとの事例もあります(福岡地裁 H10.8.5)。

会社が取るべき対応策

会社があらかじめ対策しておくべき点としては、原則としてマイカー通勤は許可制とし、無断でのマイカー通勤に備え、懲戒の対象とする就業規則を整備する必要があります。

無許可通勤者が発覚すれば、指導・注意することも必要でしょう。

社員がマイカー通勤をする場合には、任意自動車保険に加入していることを確認することも重要です。

加入している自動車保険で損害を補填できれば、会社が責任を問われることはありません。

入社時や年に一度は、補償が不足していないか、契約期間が切れていないかなども確認することをお勧めします。

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