労働・残業問題

暇なので帰っていいよ 賃金支払いは?

工場において原材料や部品の納品が突然ストップしてしまい、製造に携わっている従業員は仕事のしようがないということもあるかと思います。

こんなときも、所属長から「どうぞ帰ってください」と声がかかるかもしれません。

このように、会社側から声をかけて早退してもらったときに、その時間分の賃金を支払わなくても良いのでしょうか。

法律の規定によると、働かないなら賃金を支払わなくても良いという、「ノーワーク・ノーペイの原則」があります。

会社都合での休業と賃金支払いの考え方

企業が従業員に対して仕事がない場合、例えば納品の停止や天候不良による生産中止などで、従業員が帰宅せざるを得なくなる場合があります。この場合、賃金支払いのルールは以下のように整理できます。

ノーワーク・ノーペイの原則

労働契約に基づく賃金は、従業員が実際に働いた時間に対して支払われることが原則です。このため、働かない場合には賃金を支払う必要はない、というのが基本的な考え方です。しかし、会社側の都合で従業員が働けなかった場合には例外的な取り決めが適用されることがあります。

会社都合の休業

会社側が原因で従業員が仕事をできなくなった場合(例えば、納品ストップや天候不順による工場停止など)、賃金全額を支払うことが原則となります(民法536条2項)。ただし、就業規則に別途定めがある場合、賃金の減額が可能で、通常は平均賃金の6割まで減額できる場合があります(労働基準法26条)。

就業規則の重要性

会社が従業員に支払う賃金の取り決めに関しては、就業規則の存在が非常に重要です。就業規則において、休業時の賃金や、天候不順時の対応について具体的な指針が定められていると、会社側が法的に有利になることがあります。例えば、臨時休業時の賃金に関する規定があれば、その内容に従って対応が進むため、賃金支払いについて争いが起きるリスクが減ります。

天候不順の場合の取り扱い

天候不順(例:大雪)によって生産や仕事が止まった場合、不可抗力という観点から、会社が従業員に対して賃金を支払わない理由にはならないと考えられます。従業員側には落ち度がないため、会社側は、休業に備えた対応策をあらかじめ準備しておく必要があります。万が一の事態に備え、従業員が休業中にもできる他の作業をリストアップしておくことが有効です。

休業中の有効活用方法

休業が発生した場合、ただ帰宅させるのではなく、従業員ができる業務をリストアップしておくことが重要です。たとえば、次のような活動を推奨できます。

  • 普段できない箇所の徹底清掃
  • 接客トレーニングやロールプレイング
  • ベテラン社員によるレクチャーや指導
  • お客様の声を集約するためのミーティング
  • 競合他社の情報収集や対策協議
  • 労災発生防止に関する意識共有
  • より効率的な業務改善の意見交換

これらの活動が実施されることによって、従業員は単に「仕事がないから帰る」のではなく、生産性や業務改善に寄与する活動を行うことができ、会社としても有意義な時間に変えることが可能です。

労働契約の範囲

ただし、普段の仕事以外の業務を従業員に指示する際には、労働契約の範囲を超えないように注意が必要です。予め雇用契約書や就業規則に、業務内容に一定の柔軟性を持たせることが望ましいです。

まとめ

会社側は、従業員が働けなくなった場合においても、その理由に応じた適切な対応を取る責任があります。特に、会社都合の休業の場合には賃金を支払うことが基本ですが、就業規則で対応方法を明確にし、休業中に実施できる有益な活動を準備することが大切です。

 

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