労働者派遣・請負

派遣元が「労使協定方式」を採用したから派遣先は安堵していいのか

改正派遣法と労働契約法における「職務の相違」と待遇の格差

改正派遣法において、派遣元が「労使協定方式」を採用すると、賃金や待遇に関して派遣元で協定を締結することが可能であり、その際に**「職務の相違」**の説明を求められることはありません。しかし、派遣労働者を保護するための法律は派遣法だけではなく、以下のように複数の法律が関与しています。

1. 関連する保護法

パートタイム・有期雇用労働法:短時間労働者や有期契約労働者を保護する法律です。
派遣法:派遣労働者に特化した保護を提供します。
労働契約法:すべての非正規労働者(派遣労働者を含む)を保護する法律で、特に第20条が注目されています。労働契約法第20条は、不合理な格差の禁止を明確にしています。

2. 労働契約法第20条と「職務の相違」

派遣法において「職務の相違」の説明が求められないとはいえ、労働契約法第20条の不合理な格差禁止の観点から、待遇差について正当な説明ができない場合には**「同一の職務」と解される恐れ**があります。つまり、派遣元が「労使協定方式」で賃金等の取り決めを行っていても、その賃金差が不合理であると判断される可能性が高まるということです。

このため、派遣元は単に協定を締結しただけではなく、派遣先における職務内容や責任の違いを明確に説明できるような対応を準備する必要があります。特に、派遣先での役割や業務の相違を説明できない場合、格差が不合理であるとされるリスクが高くなります。

3. 今後増加する可能性がある裁判

最近、労働契約法第20条に基づく裁判が増加している傾向があります。派遣労働者を含む非正規雇用の労働者は、待遇に関する不平等や不合理な格差に対して、法的措置をとるケースが増えており、今後もその傾向が続くと予測されます。もし派遣元が**「労使協定方式」**を採用した場合でも、その対応が不十分であれば、訴訟リスクが高まることは理解しておくべきです。

4. 「合理的な格差の説明」の準備が重要

派遣元としては、派遣先企業に対して合理的な格差の理由や職務内容の相違について説明できる体制を整えることが、今後ますます重要になります。単に労使協定を結んだというだけで安心するのではなく、実務レベルでどのように格差を説明できるかという点について、十分な準備をしておく必要があるでしょう。

結論

派遣元が「労使協定方式」を採用した場合でも、職務の相違について明確に説明できないと、格差が不合理と見なされるリスクが高くなります。労働契約法第20条に基づく裁判が増加している現状を踏まえ、派遣元は単に法的な要求を満たすだけではなく、派遣先企業との間で合理的な格差の説明ができる体制を整えておくことが求められます。

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