人事マネジメント

外国人雇用でトラブルを防ぐ厚生年金・脱退一時金の説明方法

グローバル化の進展により、日本で働く外国人労働者は年々増加しています。多様な人材を受け入れることは企業の競争力や成長力を高める一方で、人事・労務担当者には、制度を正しく理解し、分かりやすく説明する役割がこれまで以上に求められています。

特に社会保険制度は、日本人にとっても分かりにくい面が多く、外国人労働者にとってはなおさら理解が難しい分野です。制度説明が不十分なままでは、不信感や不満につながり、職場定着に悪影響を及ぼす可能性があります。

外国人労働者が感じやすい厚生年金への疑問

厚生年金保険は、老後の生活を支える重要な制度ですが、外国人労働者にとってはなじみが薄く、「なぜ給与から保険料が差し引かれるのか」「将来、日本で年金を受け取れないのではないか」といった疑問を抱きやすい制度です。

制度の趣旨を理解しないまま保険料だけが天引きされる状況では、企業に対する不満が生じやすくなります。そのため、厚生年金が単なる負担ではなく、一定の保障を伴う制度であることを丁寧に伝えることが重要です。

こうした背景を踏まえて重要となるのが「脱退一時金制度」です。脱退一時金制度とは、日本での就労期間が比較的短く、老齢年金の受給資格を満たさないまま帰国する外国人労働者に対して、納付した保険料の一部を一時金として払い戻す仕組みです。

企業がこの制度を正しく理解し、適切に説明できるかどうかは、外国人労働者の安心感に直結します。厚生年金が完全な掛け捨てではないことを示す制度として、重要な意味を持っています。

脱退一時金制度が設けられた理由

厚生年金保険は本来、老後に支給される老齢厚生年金を目的とした制度です。しかし、外国人労働者の中には、日本での滞在期間が短く、保険料を納付しても老齢給付につながらないケースがあります。

こうした不公平感を緩和するため、日本を離れる際に一定の条件を満たせば受け取ることができる制度として、脱退一時金制度が設けられています。老齢厚生年金の受給資格期間である10年を満たさない場合に請求できる点が特徴です。

脱退一時金の支給要件

脱退一時金を受け取るためには、複数の要件をすべて満たす必要があります。

主な条件として、

・日本国籍を有していないこと

・公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でないこと

・厚生年金保険の加入期間が通算6か月以上あること

・老齢年金の受給資格期間(10年)を満たしていないこと

・障害厚生年金などの受給権を得たことがないこと

・日本国内に住所を有していないこと

・最後に被保険者資格を喪失した日から2年以内に請求すること

これらを満たして初めて、脱退一時金の請求が可能となります。

脱退一時金の計算方法と具体例

脱退一時金の支給額は、厚生年金の加入期間や平均標準報酬額を基に算定されます。基本的な考え方は、平均標準報酬額に一定の支給率を乗じて計算する方法です。

脱退一時金支給額 = 平均標準報酬額 × 支給率

【計算例】

厚生年金加入期間:2023年1月~2025年12月(36か月)

平均標準報酬額:300,000円

支給率:3.3

→ 計算結果:300,000 × 3.3 = 990,000円

なお、制度改正により、将来的には支給対象となる加入期間の上限が8年(96か月)まで延長される予定とされています。

外国人労働者に制度を説明する際の実務ポイント

日本の社会保険制度は任意加入ではなく、法律に基づいて強制適用される制度です。社会保障協定を締結している国は限定されており、すべての外国人労働者が協定の対象になるわけではありません。

そのため、制度説明の際には、社会保険料は会社と本人が折半で負担していること、医療機関での自己負担が原則3割に抑えられること、扶養家族の医療費も追加負担なくカバーされることなど、具体的なメリットを伝えることが効果的です。

あわせて、就労ビザの更新や変更に社会保険加入が必要となる点や、厚生年金には脱退一時金制度があり、掛け捨てを防ぐ仕組みが用意されていることを説明することで、理解と納得を得やすくなります。

厚生年金の脱退一時金制度は、外国人労働者にとって「払い損を防ぐ」制度であると同時に、企業が信頼関係を築くための重要な説明材料です。正確な情報を分かりやすく伝えることは、安心して働ける職場環境づくりや人材定着に直結します。

一方で、脱退一時金制度の在り方については、社会保障協定を締結している国との制度整合性という観点から慎重な検討も必要です。企業としては制度の趣旨を理解したうえで、過度な期待を持たせない説明を行うことが、実務上の重要なポイントといえるでしょう。

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