日本の高齢者雇用における「大きな壁」がまた一つ動きます。働く意欲のあるシニア世代にとって長年の悩みであった「在職老齢年金」の支給停止基準額が、現行の50万円から「62万円」へと大幅に引き上げられることになりました。少子高齢化が急速に進む日本において、高齢者の就労促進は国家的課題です。その中核にあるのが「在職老齢年金」です。
本記事では、在職老齢年金の最新制度改正のポイントを整理し、高齢者雇用のメリット・デメリットを実務目線で解説します。企業経営者・人事担当者の皆さまにとって、制度理解と賃金設計のヒントとなる内容です。
在職老齢年金とは
在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受給しながら働く場合に、給与額と年金額の合計に応じて年金の一部または全部が支給停止される制度です。
現在の仕組みでは、「基本月額(年金月額)」と「総報酬月額相当額(給与+賞与換算額)」の合計が一定基準を超えると、超過分の2分の1が支給停止となります。
2022年改正では、支給停止調整額が28万円から47万円へ引き上げられました。これにより、一定の高収入でも年金が減額されにくくなり、高齢者の就労インセンティブが高まりました。
そして現在、さらなる制度緩和や仕組みの簡素化が検討されており、「働き控え」を防ぐ方向性が示されています。
2026年に向けた制度改正の方向性
2026年改正の焦点は以下の点にあります。
① 支給停止基準のさらなる見直し
支給停止調整額の引き上げ、または制度そのものの縮小・廃止が議論されています。目的は明確で、「高齢者の労働参加率向上」です。
② 計算方法の簡素化
現行制度は計算が複雑で、企業側も本人も理解しにくい仕組みです。簡素化によって制度の透明性向上が図られる可能性があります。
③ 高齢者雇用政策との一体化
70歳までの就業機会確保措置が努力義務となっている中、年金制度と雇用政策を一体で設計する流れが強まっています。
企業にとっては、単なる年金制度の問題ではなく、「高齢者戦略」の一部として捉える必要があります。

出所:厚労省 在職老齢年金制度の見直しについて
高齢者雇用のメリット
1. 経験・ノウハウの継承
高齢従業員は長年の経験と専門性を有しています。若手への技能伝承や顧客対応の安定性確保という点で、大きな戦力となります。
2. 人材不足への即効性
慢性的な人手不足が続く中、即戦力として活用できるのが高齢人材です。採用コストや教育コストの削減にもつながります。
3. 職場の安定化
勤続年数が長い高齢従業員は定着率が高く、職場の心理的安全性を高める効果もあります。コンプライアンス意識が高い傾向も見られます。
4. 企業イメージの向上
高齢者活用に積極的な企業は、社会的評価が高まります。ESGや人的資本開示の観点でもプラス材料となります。
高齢者雇用のデメリット・課題
1. 人件費の逆転現象
役職定年後も高い給与水準を維持すると、若手との賃金バランスが崩れます。評価制度の再設計が不可欠です。
2. 業務負担・安全配慮
体力的・健康面の配慮が必要となります。特に製造業や建設業では安全管理体制の強化が求められます。
3. 世代間の価値観ギャップ
働き方やコミュニケーションの違いから、組織内摩擦が生じる可能性もあります。マネジメント力が問われます。
4. 在職老齢年金による「働き控え」
制度が複雑なため、「これ以上働くと年金が減る」と誤解し、労働時間を抑えるケースがあります。企業側の説明責任も重要です。
企業が今すぐ検討すべき実務対応
① 賃金制度の再設計
職務・役割に応じた処遇へ移行することが重要です。年齢給的要素を縮小し、成果や専門性を評価する仕組みへ転換します。
② 年金シミュレーションの活用
従業員に対して、在職老齢年金の影響を説明し、就労パターンごとの試算を示すことで、不要な働き控えを防止できます。
③ 健康管理体制の強化
定期健診や勤務時間調整など、継続就労を支える体制整備が必要です。
④ 助成金の活用
65歳超雇用推進助成金など、高齢者雇用関連助成金を活用することでコスト負担を軽減できます。
在職老齢年金改正が企業に与える影響
制度が緩和されれば、「年金が減るから働かない」という心理的ブレーキは弱まります。結果として、
・労働時間の延長
・フルタイム復帰
・管理職再登用
などが進む可能性があります。
一方で、人件費増加や評価制度の再設計が不可避となるため、戦略的な対応が求められます。
まとめ|在職老齢年金改正は“人材戦略”の転換点
2026年4月からは、基準額が62万円にまで引き上げられます。 この「12万円」の差は絶大です。例えば、年金を月15万円受給している方なら、月給47万円までであれば年金を1円もカットされることなく全額受け取れるようになります。在職老齢年金の最新制度改正は、単なる年金問題ではありません。企業にとっては「高齢人材をどう活かすか」という経営課題です。
高齢者雇用には、
【メリット】
・経験活用
・人手不足解消
・組織安定
【デメリット】
・賃金設計の難しさ
・健康配慮
・世代間調整
という両面があります。
制度改正の動向を正確に把握し、賃金制度・評価制度・就業設計を総合的に見直すことが、これからの企業経営に不可欠です。
2026年は、高齢者雇用戦略の分岐点となる可能性があります。
早期の準備が、企業競争力を左右するといえるでしょう。

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