育児介護・高齢法

外国人労働者の妊娠・帰国と社会保険給付をめぐる基本的な考え方

近年、外国人労働者の増加に伴い、妊娠を契機として母国へ一時帰国し、出産後は日本の社会保険制度に基づく給付を受けたいという相談が人事・労務の現場で増えているようです。特に多いのが、「母国で出産する予定だが、出産手当金や育児休業給付金は受けられるのか」という問い合わせです。海外での出産という点に目が向きがちですが、実務上は“どこで出産するか”よりも、“どの制度の被保険者資格をどのように維持しているか”が判断の軸となります。

日本国在籍要件はあるのか

結論からいえば、出産手当金および育児休業給付金には、「日本国内に在籍していること」や「日本で出産すること」を直接の要件とする規定はありません。制度の要件を満たしていれば、母国へ帰国し海外で出産した場合であっても、給付の対象となり得ます。この点は誤解が多く、企業側が誤った説明をしてしまうと、後々トラブルに発展するおそれがあります。

重要なのは、給付を受ける時点において、健康保険および雇用保険の被保険者資格がどのような状態にあるかという点です。単に帰国したという事実のみで、直ちに給付対象外になるわけではありません。

出産手当金の制度趣旨と海外出産時の取扱い

出産手当金は、健康保険の被保険者が、出産のために会社を休み、その期間に賃金の支払いを受けられない場合に支給される所得補償制度です。支給期間は、原則として出産日以前42日間(多胎妊娠の場合は98日間)と、出産日の翌日以降56日間です。

出産手当金については、出産場所が日本国内か国外かを問わない点が特徴です。海外で出産した場合であっても、出産の事実を証明する書類などを提出できれば、支給対象となります。ただし、前提として、出産時点で健康保険の被保険者資格を喪失していないことが必要です。妊娠を理由に退職し、資格を喪失した後の出産については、原則として出産手当金は支給されません。

育児休業給付金の仕組みと日本国在籍との関係

育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が育児休業を取得した場合に支給される給付です。この制度も、育児休業期間中に日本国内に居住していることを要件としていません。海外で育児を行う場合であっても、育児休業の要件を満たしていれば、給付の対象となります。

もっとも、育児休業給付金は、雇用関係の継続を前提とした制度です。育児休業終了後に職場へ復帰することが予定されており、休業中も雇用契約が維持されていることが重要なポイントとなります。そのため、妊娠・出産を機に日本での就労を終了し、事実上復職の見込みがない場合には、育児休業給付金の支給要件を満たさないと判断される可能性があります。

外国人労働者が母国へ帰国して出産するケースでは、会社として次の点を丁寧に確認する必要があります。まず、産前産後休業および育児休業を取得する形で在職を継続するのか、それとも退職を前提とした帰国なのかを明確にします。在職を継続する場合には、健康保険・雇用保険の資格が維持されるかどうかが重要です。

また、育児休業後の復職予定についても確認が必要です。復職時期や就労形態について一定の見通しが立っていることは、育児休業給付金の説明を行ううえで欠かせません。加えて、在留資格の有効期限や更新の可否についても、長期の海外滞在が影響しないかを把握しておくことが求められます。

企業が説明すべきポイントと注意点

企業側が説明する際には、「海外で出産しても給付を受けられる可能性がある」という点だけを強調するのではなく、「被保険者資格の継続」と「雇用関係の維持」が前提条件であることを併せて伝える必要があります。日本国に在籍していなくても受給可能である一方、退職や資格喪失があれば給付対象外となる点を明確に説明することが重要です。

また、給付手続きには、出産証明書や翻訳書類など、通常よりも多くの書類が必要となる場合があります。手続きに時間を要することも含めて事前に説明しておくことで、不要な誤解や不満を防ぐことができます。

まとめ

外国人労働者が妊娠を契機として母国に帰国し、出産手当金や育児休業給付金の受給を希望する場合、重要なのは「日本にいないこと」ではなく、「社会保険・雇用保険の資格を適切に維持しているか」という点です。両給付とも、日本国内に在籍していることを要件としておらず、制度上は海外出産・海外育児であっても受給の可能性があります。

企業としては、制度の趣旨と要件を正しく理解したうえで、過度な期待を持たせることなく、現実的かつ丁寧な説明を行うことが求められます。こうした対応は、外国人労働者の安心感を高めるだけでなく、企業と従業員との信頼関係を維持するうえでも重要な意味を持つといえるでしょう。

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