労働・残業問題

売上厳しく 給料10か月分払わず

会社で従業員に給料を払うか、払わないか、というのは、裁判所でいうと通常民事事件です。

しかし、時には、刑事事件に発展することもあります。

一例を紹介します。

神戸西労働基準監督署は、従業員に給料を支払わなかったとして、神戸市の会社社長の男性と、法人としての会社を「最低賃金法違反」の容疑で神戸地検に書類送検しました。

事務員の女性に対して、総額370万円以上の給料が未払いで、会社は1年前には事実上の倒産状態だったということです。

社長の男性は、「売り上げが厳しくて払えなかった」と容疑を認めているといいます。

「最低賃金法」という法律があることを知らなかった人もいると困りますので、簡単に解説しておきましょう。

最低賃金法について

第1条(目的)
この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

第4条(最低賃金の効力)
1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

第32条(労働基準監督官の権限)
1.労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。

第34条(監督機関に対する申告)
1.労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

単純にいえば、社長は従業員に国で決められた「最低賃金」よりも多く給料を支払わなければいけないし、もし支払われなければ、労働基準監督署に訴えることができる、ということです。

労働基準法にも同様な条文があるとお気づきの方もいらっしゃるでしょう。

それもその筈で、最低賃金法は労働基準法から派生した子供の法律に当たるからです。

これらに違反した場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金です。

給料を払わないのは「犯罪」なのです!

ちなみに、労働基準監督官の立ち入り検査を拒否、妨害、忌避したり、嘘をついた場合は、30万円以下の罰金になります。

労働基準監督署を無視する経営者がいますが、甘くみてはいけません。

検査拒否も犯罪なのです。

監督官の調査に変化が

少し前までは監督官の臨検といえば、予め文書による予告や電話での連絡があったものですが、最近は少々変わってきつつあります。

突然、連絡なく来社するケースが見受けられます。

法定帳簿を見せること、作業現場を視察することを訴えてくるようですが、責任者不在であることで文書を置いて、再連絡を求めているようです。

日頃の労務管理がしっかりしていれば問題ないのかもしれませんが、残業代を支払っているものの基礎額に誤りがあって、思わぬ出費となることも多々ありますので注意したいものです。

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