用語解説

解説:2重派遣

労働者派遣は、元来
「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、
当該他人のために労働に従事させること」(労働者派遣法第2条・1号)
を意味します。

しかし、二重派遣においては、派遣先と労働者との間には雇用関係がなく、
法律上は労働者派遣に該当しないものです。

従って、派遣先においては、法律上の労働者派遣事業ではない形で二重派遣先に
対して労働者を供給しているものとして職業安定法第44条の違反の問題が
生じうるところであります。

職業安定法第44条は、
「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、
又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に
労働させてはならない。」と
規定していることから、二重派遣の場合には二重派遣先にも職業安定法違反の
問題が生じうる可能性があります。

なお、この職業安定法第44条に違反したものは、1年以下の懲役又は百万円
以下の罰金に処す旨の規定があります(同法64条)。

解説:専ら派遣

専ら派遣が「特定の者」に対して労働者を派遣するものであるのに対し、
「複数のグループ内企業」に労働者を派遣する場合(グループ内派遣)には、
条文の文言上、前掲の各条項に明確には該当しません。

しかし、同様の問題が生じることは以前から指摘されており、派遣先企業が
複数であっても、それ以外の企業に全く労働者を派遣しない場合には、
「特定の者」に対する労働者の派遣とみなすべきであるとの
解釈も主張されてきました。

同時に、この義務に違反している派遣会社には、指導、勧告及び許可の取消等の
措置を行うことが適当であるとの指摘もされています。

改正派遣法では、雇用する派遣労働者の総労働時間ベースで、
同一グループ内での派遣割合を8割以下とするよう定められています
(同改正法案23条の2)。

解説:偽装請負

一般に請負は、請負人が仕事の完成を約束し、注文者がこれに対して報酬を支払うことを約束する契約です(民法632条)。
そして、請負契約においては、注文者と請負人の労働者との間には何等の指揮命令関係が成立せず、又、発注者が請負人の労働者に対して監督義務を負うことは通常ありえないとされています。

しかし、偽装請負においては、受入れ企業側は、労働者を直接指揮命令するにもかかわらずその監督責任が曖昧になっています。

そのため偽装請負にあっては、賃金が低く、労働災害の際にも受け入れ企業側の責任が曖昧となり、しかも企業側は簡単に実質上の解雇手続等をとることができ、労働者保護の要請に欠ける等の様々な問題が生じています。

さらに、この偽装請負は、その労働の実態が労働者派遣そのものに該当する場合、労働者派遣法上の重大な問題が発生します。

つまり、人材会社にあっては、労働者派遣事業についての許可ないし届出をしていなければその点だけでも重大な法令違反となります。

また、派遣事業の許可ないし届出をしている場合でも、労働者派遣法に規定する
「派遣元事業主の講ずべき措置等」
を講じていなければやはり労働者派遣法に違反することとなります。

そして、偽装請負において労働者を受け入れた企業側についても、
派遣事業主以外の労働者派遣事業者から役務の提供を受けていれば労働者派遣法24条の2に違反する場合があり、
又、「派遣先の講ずべき措置等」を行っていないもの
としてやはり労働者派遣法に違反することになります。

また、偽装請負にあっては、労働者派遣法違反のみならず場合によっては職業安定法に違反するとの指摘もあります。

偽装請負・偽装出向に伴うリスク

①労働局による立入調査で是正指導を受けた場合、
1ヶ月以内に業務を改善し、また全ての業務の状態を報告し、
かつ3ヶ月以内に改善しなければなりません。

これを怠ったり、隠ぺいするようなことがあれば
書類送検され刑事罰を受ける可能性があります。

②偽装請負は実質派遣とみなされるため、使用者責任を伴うことになります

長時間労働などにより事故や自殺などの問題が発生した場合は、
多額な損害賠償を委託・受託双方の会社に請求する判例も出ています。

③請負の場合、法人事業税の外形標準課税はありませんが、
派遣の場合、派遣料金の75%に対して0.48%の課税が
あります。偽装請負は脱税行為です。

④請負であれば期間に関する制限はありませんので長期間契約を続けることができますが、
その実態が偽装請負で、受入れ期間が派遣法上の派遣可能期間を超える場合、
その従業員に対する 直接雇用申し込み義務が発生し、
場合によっては直接雇用が強制されるおそれもあります。

解説:偽装出向

偽装出向とは

出向契約で受け入れている労働者を
営利目的・偽装請負を隠ぺいするために他社に派遣している。
または、再出向させている。

出向が「業として行われる」場合には、職業安定法により禁止される
労働者供給事業に該当し、職業安定法に違反するものです。

偽装出向が生まれた背景

派遣契約を結ぶと、派遣法の適用を受け、受入期間が制限(自由化業務は最長3年)されるので、
面倒だと敬遠する経営者が少なくありません。
派遣ではなく、自社の社員同様に指揮命令できる雇用スキームはないかと、
考えた結果、「偽装出向」という手段が編み出されたようです。

出向には在籍型と移籍型があり問題なのは前者

「出向」には、出向元事業主との関係において、
「在籍型出向」と「移籍型出向」の
二種類に分類されています。

ここで問題になるのは、「在籍型出向」です。

「在籍型出向」は、
出向元事業主と労働者の間だけでなく、
出向先と労働者の間にも労働契約関係が生じる(二重の労働契約関係)
ことになることから、
労働者供給に該当することになるのです。

派遣は、
「自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受けて働かせることをいい、
他人に雇用させることを約するものを含まない」(派遣法第2条第1号)
と定義されています。

出向は、他人と労働者の間に雇用の約束が生じるので、派遣に該当しません。

しかも、請負と違って、出向先企業が出向労働者に対して直接指揮命令を
下すことができます。

しかし、その態様によっては、違法とみなされるおそれも存在します。

二重の雇用関係の問題点

二重の雇用契約関係が存在する場合、
形式的には職業安定法第44条で禁止する
「労働者供給事業」に該当します。

ポイントは、
労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる「労働者派遣」を
原則として禁止する職業安定法44条であり、
単なる「人材提供」、「労働力提供」
ではないことが重要となります。

言い換えると、正当な目的を持った出向でなければなりません。

 

<出向の目的と要件>(1)雇用確保のための出向
(2)経営指導や技術指導のための出向
(3)技術習得や業務経験などの能力開発のための出向
(4)企業グループ内の人事交流のための出向

上記のいづれかに該当するならば、適法な出向であります。

目的として、「業として」行われていないから適法であり、合法であるのです。

「業として」の意味

出向の目的として、「業として」行われていないから適法であり、合法であると
申し上げました。

では「業として」とは、どのようなものなのでしょうか。

「業として」行われている場合の扱いは、
法違反については、契約の形式でなく、実態に即してどの法律を適用するか
判断します。

「出向という名称が用いられたとしても、実質的に派遣とみられるケース」では、
労働者派遣法に基づいて処分が行われます(労働者派遣事業関係事業取扱要領)。
つまり、労働者派遣は業として行い、営利を追求する事業であり、
特別に許認可制がとられており、実質的に出向といえども利潤(マージン)が
あるのであれば、出向ではなく労働者派遣事業に該当するということに
注意しなければなりません。

実際にあった違法事例

・発注企業が、下請業者の労働者を指揮監督する(形式的に偽装請負を回避する)目的で
下請業者に現場責任者等を出向させる行為

・下請業者が、形式的に労働者派遣を回避する目的で上位会社(発注企業)に
現場労働者や技術者等を出向させ、出向元が当該出向労働の成果を
自社の売上に計上する行為

人材会社が出向を営利事業として行うことは、労働者を商品のように売り買いすることに
つながりかねないため、禁止されているのです。

抵触日対策、偽装請負を回避するための安易な出向には、注意しなければなりません。

偽装請負・偽装出向に伴うリスク

①労働局による立入調査で是正指導を受けた場合、
1ヶ月以内に業務を改善し、また全ての業務の状態を報告し、
かつ3ヶ月以内に改善しなければなりません。

これを怠ったり、隠ぺいするようなことがあれば
書類送検され刑事罰を受ける可能性があります。

②偽装請負は実質派遣とみなされるため、使用者責任を伴うことになります

長時間労働などにより事故や自殺などの問題が発生した場合は、
多額な損害賠償を委託・受託双方の会社に請求する判例も出ています。

③請負の場合、法人事業税の外形標準課税はありませんが、
派遣の場合、派遣料金の75%に対して0.48%の課税が
あります。偽装請負は脱税行為です。

④請負であれば期間に関する制限はありませんので長期間契約を続けることができますが、
その実態が偽装請負で、受入れ期間が派遣法上の派遣可能期間を超える場合、その従業員に対する 直接雇用申し込み義務が発生し、
場合によっては直接雇用が強制されるおそれもあります。

 

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