2024年(令和6年)も法改正がなされます。
経営戦略や人事政策に影響を与えるであろう改正点を知ることで、事前の対策を講じていただければ幸いに思います。
労働基準法施行規則の改正により、無期転換ルールが明確化
2024年4月から、労働条件の明示に関する規則が改訂されます。
この変更は厚生労働省による労働基準法施行規則の一部修正であり、労働者と雇用者間の不一致や、有期契約から無期契約への変更に関するトラブルを未然に防ぐことが狙いのようです。
今回の改正により、有期契約労働者に対して「無期転換申込権」が発生する更新時に、無期転換の申し込みが可能である旨(無期転換申込機会)を明示することが義務づけられます。
使用者は機会の明示に加えて、無期転換後の労働条件も明確にしなければなりません。
この措置の目的は、労働者自身が自らの権利を理解し、それに基づいて無期転換を選択するかどうかを判断できるようにすることです。
また、今回の改定によって、全ての労働契約の成立時や有期契約の更新の際に、就業場所や業務の変更の範囲も明示が必要になります。
従来は採用直後の勤務地と担当業務の明示だけで十分だったものが、新しい規定では採用直後の勤務地や業務内容、それらの変更可能性も明記しなければなりません。
労働者を雇い入れる際に交付する労働条件通知書には以下の事項の記載が義務づけられます。
- 就業場所および従事すべき業務の変更の範囲
- 更新上限の有無および内容
- 無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨
- 無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件
障害者雇用率の引き上げ
現在、民間企業における障害者の法定雇用率は2.3%ですが、これが2024年4月には2.5%に、さらに2026年7月には2.7%に引き上げられる見通しです。
この変更により、少なくとも1人の障害者を採用する必要がある企業の対象が拡大します。
具体的には、2024年4月からは従業員数が40人以上の企業、2026年7月からは従業員数が37.5人以上の企業が該当することになります。
時間外労働の上限規制の適用
建設業や自動車運転業などに関しては5年間の猶予期間が設けられていましたが、2024年4月1日からは、残業の上限が月45時間、年間で360時間と厳格に制限されます。
特別な状況が認められない限り、これを超過することは許されません。
これらの業界では、他の産業に比べて長時間労働と高齢労働者の問題が深刻で、働き方を一変させるのは容易ではないだろう。
そのため、多くの企業が対策として、働き方改革の準備を進めていかねばなりません。
厚生年金保険法の改正による適用拡大
2020年に成立した「年金制度改正法」により、短時間労働者が社会保険の加入対象となる企業規模が段階的に引き下げられることが決まっています。
2022年10月からは、従業員数101~500人の企業、そして2024年10月からは従業員数が51~100人の企業も社会保険の適用範囲拡大の対象となります。
マイナンバーカードと健康保険証の一体化
2023年6月2日に、マイナンバーカードと健康保険証の統合を含む改正マイナンバー法が可決されました。
この改革により、2024年秋からは紙やカード形式の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードが健康保険証として使用されることが事実上必須となるようです。
ただし、2024年秋以前に発行された健康保険証については、その有効期限(最も遅くても2025年秋まで)が到来するまでは、今まで通り使うことができるようです。
また、マイナンバーカードを持っていない方や、登録ができていない方、あるいはカードを紛失した方でも医療を受けられるように、健康保険組合などが「資格確認書」を無償で提供する計画もあります。
この資格確認書の有効期限は当初1年とされていたが、上限が5年に延ばされる方針です。