経歴詐称であれば直ちに解雇できるわけで
はありません。
あくまでも真実を告知したならば採用され
なかったであろうという採否の決定や採用
後の労働条件に大きく影響を及ぼす「重大
な経歴詐称」の場合に、懲戒解雇が認めら
れる裁判例が多いといえます。
こうした問題を防ぐために、まず採用時の
プロセスにおいて、内定を出す前に厳しい
審査が必要です。
業務に必要となる資格に関しては、証明で
きる書面等の原本を確認することは、もち
ろんです。
中途採用で職歴がたくさんある場合に、す
べて職歴の確認を取ることは難しいといえ
るでしょう。
少なくとも前職の勤務先においては、証明
書を提出してもらい、勤続期間や退職理由
などを確認しておくのが望ましい対応です。
法律では、
「労働者が、退職の場合において、使用期
間、業務の種類、その事業における地位、
賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の
場合にあっては、その理由を含む。)につ
いて証明書を請求した場合においては、使
用者は、遅滞なくこれを交付しなければな
らない」
と規定されています(労基法第22条1項)
。
従って、既に退職している方については、
証明書の提出を求めることは可能です。
もし、スムーズに証明書が提出されないと
きは、何らかのトラブルが元勤務先との間
であったとも考えられるため、ひとつの判
断要素になるでしょう。
もちろん、本人が話していた状況と事実が
異なる場合は、証明書自体を提出すること
で経歴詐称が明らかになってしまうことも
あるので、本人から辞退することも考えら
れます。
また、募集する人材についてどのような学
歴、経歴、資格等が必要であるか明確化す
るとともに、それに応じた人事管理がなさ
れていることを明らかにするために人事管
理体制を整備することも大切です。
履歴書や職務経歴書で不審に思うところが
あれば、健康状態も含めてきちんと面接時
にしっかりと確認し、本人の申告内容につ
いて記録を取っておくことも大切でしょう。