●人材育成も短期的視点で金太郎飴化も
もう一つ歩合制における人材育成の問題点は「金太郎飴化」
です。
営業成績が優秀な社員は自分の歩合を稼ぐのに必死ですか
ら、教育に時間を割けません。
この様な会社で生き残るためには優秀な社員の真似をするの
がベストなのです。
「営業とはこうだ!!」
「優秀な社員と君とはここが違うから駄目なんだ!!」
この様な指導が行われます。
優秀な社員の真似をすることは初期の教育では大切ですが、
それだけでは人材は育成されません。
組織に必要なことは「人材の多様性」です。
ストレートでも変化球でも対応できる組織作りです。
一人の能力には限界がありますから、多様な能力や個性を
持った人間が集まり組織を形成するからこそ企業は強くなる
のです。
歩合制の弊害として多様な価値観を受け入れる組織風土が
つくりにくいということがあります。
一人の優秀な営業マンの営業方法が陳腐化したらその会社
は坂道を転がり落ちてしまうのです。
●歩合制の効果が出る場合とは
これまでお話ししたように歩合制は弊害も存在する制度です。
しかし全ての業種に合わないかというとそうではありません。
効果のある職種は運送業などの職種です。
営業職が仕事を取ってきて、ドライバーがそれを効率的にこな
していく様な業務です。
この場合、「効率性の向上」によって「賃金額が上昇」します
から、歩合を稼ぐという意識により効率がよくなり生産性が
向上した結果、企業は多くの仕事を捌けることにより売上が
上がる。
所定労働時間内の生産性が向上することにより利益が上がる
という構図になるのです。
営業という仕事は「効率の追求」だけでは出来ませんから歩合
制には不向きな職種ということになってしまいます。
●さいごに
歩合制の仕組みを解説した書籍などはありますが、デメリットを
中心とした意義については余り紹介されていません。
労働時間と賃金はまさに組織を動かす血液です。
この血液が全身に勢いよく行き渡るためにはどの様な制度が
いいのか、検討してみてもいいのではないでしょうか。