労働者派遣・請負

発注者が直接指示する偽装請負には要注意

現行の派遣法では、「労働者派遣事業」に一本化されており、労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない、とされています。

しかし、許可事業者には要件が課せられており、簡単ではない側面があるのです。

労働者派遣事業の許可要件

1.貸借対照表での資産が2000万円×事業所数以上あること

2.現金・預金の額が1500万円×事業所数以上あること

3.雇用管理経験を3年以上もつ派遣元責任者の配置

4.20平米以上の広さがある事務所

5.社会保険100%加入

などが挙げられます。

この要件をクリアできなかった旧特定派遣事業者も存在します。

許可制に切り替えられなければ引き続き派遣事業を行うことはできませんから、闇に潜るような契約が横行するのではないかとも囁かれています。

その契約というものが「偽装請負」という契約なのですが、言葉が一時期マスコミをにぎわせたのはご存じの通りです。

偽装請負の問題

偽装請負とは、実際には派遣契約であるべきところを、請負契約として契約を結んでいる場合を指します。請負契約であれば、発注者側が指揮命令権を持って業務を指示することはありませんが、偽装請負では、実態として発注者が指示を出すなど、派遣のような形態になっていることがあります。

偽装請負が問題視される理由

  • 指揮命令系統の不明確さ:発注者側が実際に指示を出す場合、偽装請負として判断されます。
  • 安全衛生面のリスク:適切な管理者がいないと、労働者の安全衛生に対する配慮が欠如し、事故などのリスクが増大します。
  • 管理責任者不在のリスク:適切な管理責任者がいない場合、請負業務の管理が不十分になる可能性があります。

請負契約と派遣契約の違い

請負契約と派遣契約は、実質的に異なる性質を持っています。請負契約では、作業場での指示や労働者の管理について請負事業主が責任を持ちます。一方、派遣契約では、派遣元事業主が労働者を管理し、派遣先が指示を出すことが求められます。

偽装請負の例

  • 管理責任者の兼任:作業者が1人しかいない場合、その作業者が管理責任者を兼任していると、発注者からの指示が事実上、派遣先から派遣労働者への指揮命令となり、偽装請負となります。
  • 業務区分が不明確な契約:契約内容が請負であるにも関わらず、実態として派遣契約に近い場合は、偽装請負と見なされることになります。

偽装請負のリスクと責任

偽装請負は、労働法規に違反しているため、発覚した場合、企業側は法的責任を負うことになります。偽装請負が行われている場合、発注者や請負事業主は労働者に対して正当な賃金や福利厚生を提供する義務を果たしていないことになり、罰則や法的措置が取られる可能性があります。

まとめ

派遣事業は厳しい規制の下で行われており、派遣契約を適切に締結することが求められています。偽装請負は、実態が派遣契約であるにも関わらず請負契約を結ぶことで発生します。これにより、指揮命令権や労働者の管理責任が不明確になり、法的リスクが高まります。企業としては、正当な契約形態を選び、労働者の安全や賃金、福利厚生などを守るために適切な対応をすることが重要です。

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