労働・残業問題

正社員の待遇見直しと非正規社員との格差解消に関する最高裁判決の影響

今年7月に最高裁判所は、正社員の待遇を引き下げることで非正規社員との格差を縮小する手法を容認しました。

同様に、東京地裁も5月に同様の判断を下しています。

この手法では、非正規社員の手当を増やすのではなく、正社員の手当を減額する形で格差を解消することを可能にするもので、労働条件の見直しが広がった場合、多くの労働者が不利益を受ける可能性があるとの懸念が指摘されています。

正社員の待遇引き下げによる格差解消を認めた最高裁判決の波紋

この判決は、正社員に支給されていた手当(扶養手当や住宅手当)を非正規社員に拡大した結果、正社員が不利益変更として訴えた事例に基づいています。

最高裁は、労働契約法第9条および第10条に基づき、就業規則の変更が合理的であれば、労働者に不利益が生じても適法であると判断しました。

これにより、企業が経営の見直しや危機に直面した際、労働条件を変更する際の指針となり得る可能性が示唆されています。

しかし、特に賃金や退職金の減額に関しては「高度な必要性」が求められ、企業は変更の合理性を示しつつ、労働者と十分に協議することが重要です。

今後、企業は労働条件の改定にあたり、法的なリスクに十分留意しながら慎重に進めることが求められます。

特に不利益変更に関しては、労働者との信頼関係を損なわないよう、細心の注意を払うことが必要です。

労働条件の不利益変更には労働者の同意が必要ですが、同意の有無は慎重に判断する必要があります。

労働者が同意しているように見える場合であっても、変更内容や程度、経緯、労働者への説明内容等を踏まえ、その同意が自由意思に基づくものであるかどうかが、合理的に判断されるべきとされています。

まとめ

その不利益変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がなされるに至った経緯、当該行為に先立つ労働者への情報提供または説明等の内容に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいて為されたものと認めるに足りる合理的理由が客観的に存在するか否かとの観点からも判断されるべきものとされました。

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