企業の採用選考時の面接では、採用担当者と応募者がさまざまな会話をすると思われます。
なかには「受け答えを見るため」「リラックスしてもらうため」などの理由で、採用担当者が他愛もない雑談のような質問をすることもあることでしょう。
例えば、
「お父さんはどんなお仕事をされているのですか」
「尊敬している人はいますか」
などといった質問は、職業安定法によって禁止されているということはご存じでしょうか?
採用選考時において「聞いてはいけないこと」をお伝えします。
職業安定法に基づく禁止事項
職業安定法第5条の4に基づき、採用選考時に以下の質問をすることが禁止されています。具体的には、「本人の職務能力と直接関係のない事項」について尋ねることが問題視されます。
禁止されている質問例
- 本籍、出生地
例:「どこの出身ですか?」「地元はどこですか?」 - 家族に関すること
例:「お父さんの職業は?」「兄弟姉妹の学歴は?」 - 住宅状況
例:「持ち家ですか?賃貸ですか?」「どの地域に住んでいますか?」 - 生活環境、家庭環境
例:「ご家庭の経済状況は?」「子どもはいますか?」 - 宗教に関すること
例:「特定の宗教を信仰していますか?」 - 支持政党
例:「どの政党を支持していますか?」 - 人生観、生活信条
例:「あなたの座右の銘は?」「どのような信条を大切にしていますか?」 - 尊敬する人物
例:「尊敬している人は誰ですか?」 - 思想
例:「特定の社会問題についてどう考えますか?」 - 社会運動
例:「学生運動や労働組合活動に参加した経験はありますか?」 - 購読新聞、雑誌、愛読書
例:「どの新聞を読んでいますか?」「最近読んだ本は?」
なぜ禁止されているのか
(1) 差別の防止
上記の質問により、応募者が出身地や家庭環境、宗教などの背景で差別されるリスクがあるため、これらの質問は不適切とされています。
(2) 採用基準の明確化
面接では応募者の職務能力やスキルを評価することが目的です。禁止事項に触れる質問を行うと、企業が不適切な基準で判断していると思われる可能性があります。
(3) 風評リスクの回避
応募者が「不当な質問をされた」と感じ、ハローワークやSNSで相談・公表した場合、企業の評判を損なうリスクがあります。
実務上の注意点
(1) 禁止事項に触れない面接設計
面接担当者は、以下のような配慮を行う必要があります。
- 職務内容や応募者のスキルに焦点を当てた質問を用意する。
- 面接前に禁止事項を確認し、全担当者が共通認識を持つ。
(2) 雑談のリスク管理
「リラックスしてもらうため」として、雑談のつもりで禁止事項に触れることがよくあります。
例:「ご両親はどんなお仕事をされていますか?」など。雑談にも慎重な姿勢が求められます。
(3) 応募者の情報管理
応募者が提供した情報(エントリーシートや履歴書)の取り扱いについても、適切に管理し、不必要な情報を求めないようにします。
まとめ
採用面接では、応募者の職務能力に関連する質問に限定し、プライバシーや差別に関わる質問を避けることが求められます。企業は採用プロセスの透明性を確保し、求職者に信頼される選考活動を行うことで、良好な関係を築いていきましょう。