人事マネジメント

同一労働同一賃金の実務対応と最新判例のポイント

2020年4月から大企業、2021年4月から中小企業に適用された「同一労働同一賃金」ですが、施行から数年が経過し、様々な裁判例も蓄積されてきました。最近では多くの企業から「実際にどこまで対応すればよいのか」「今からでも見直すべきポイントは何か」というご質問をいただきます。

今回は、2025年3月時点での同一労働同一賃金に関する最新動向と実務対応のポイントについてお伝えします。

最近の裁判例から見る実務対応のポイント

1. 基本給の均等・均衡待遇

最高裁判決(メトロコマース事件、日本郵便事件等)では、職務内容や人材活用の仕組みが同じであれば、雇用形態の違いだけで賃金差を設けることは許されないという判断が示されています。

実務対応のポイント

  • 基本給の決定要素(職務内容、能力、成果、勤続年数など)を明確化する
  • 同じ決定要素に対しては同じ賃金水準を適用する
  • 異なる賃金水準を適用する場合は、合理的な理由を説明できるようにする

2. 各種手当の均等・均衡待遇

最近の裁判例では、特に「住宅手当」「家族手当」「通勤手当」などの生活関連手当について、非正規社員への支給の必要性が問われるケースが増えています。

実務対応のポイント

  • 各手当の趣旨・目的を就業規則等で明確化する
  • 手当の性質上、雇用形態による差が合理的と言えるかを検討する
  • 特に「通勤手当」など、労働と直接関係する手当は同一支給が原則

3. 賞与・退職金の取扱い

長期雇用を前提としない有期契約労働者に対する賞与・退職金の不支給は、一定の合理性があるとされる傾向にありますが、職務内容や期間の定めなく働く意思が正社員と変わらない場合は、一律不支給とすることが難しくなっています。

実務対応のポイント

  • 賞与の算定根拠や支給目的を明確化する
  • 長期勤続を理由とする部分と業績貢献を理由とする部分を分けて考える
  • 契約更新を繰り返し長期雇用実態がある非正規社員への対応を検討する

2025年の最新トレンドと対応策

1. 賃金テーブルの統一化・簡素化

多くの企業では、雇用形態別の複雑な賃金体系から、職務や役割に基づくシンプルな賃金テーブルへの移行が進んでいます。これにより「同一労働同一賃金」の原則により適合しやすくなります。

対応策

  • 職務等級制度の導入・見直し
  • 雇用形態にかかわらず適用できる評価制度の構築
  • 各手当の必要性を再検討し、基本給への組み込みを検討

2. 待遇格差の合理的理由の文書化

2025年の労働局の調査では、待遇差の理由説明を求められるケースが増加しています。「説明義務」への対応がより重要になっています。

対応策

  • 待遇差の理由を合理的に説明できる資料を準備
  • 就業規則や賃金規程に待遇差の理由を明記
  • 非正規社員への丁寧な説明と理解促進

3. 無期転換社員の処遇見直し

有期契約から無期転換した社員の増加に伴い、無期転換後の処遇をどうするかが新たな課題となっています。

対応策

  • 無期転換社員向けの新たな職務区分・賃金体系の検討
  • 正社員登用制度との連携
  • キャリアパスの明確化

今から始める対応チェックリスト

□ 賃金項目ごとに「同一労働同一賃金」の対応状況を確認する
□ 雇用形態間の待遇差の理由を文書化する
□ 非正規社員向けの待遇・評価制度を見直す
□ 無期転換社員の増加に対応する人事制度を準備する
□ 就業規則・賃金規程の表現を見直す

おわりに

同一労働同一賃金は、単なる法令遵守の問題ではなく、「公平な処遇」を通じた人材確保・定着の観点からも重要です。ぜひ、この機会に貴社の人事制度を見直してみてはいかがでしょうか。

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