2020年の労働者派遣法改正により、派遣労働者の賃金の決定方法として、「労使協定方式」または「派遣先均等・均衡方式」のいずれかを選択することが義務づけられました。現在、多くの派遣元事業者が「労使協定方式」を採用しています。
毎年6月は「労働者派遣事業報告書」の提出期限となる時期です。派遣元事業主は、毎年6月30日までに「直近の事業年度の実績」および「6月1日現在の状況」を、「労働者派遣事業報告書(様式第11号)」にて報告する義務があります。
この報告書に添付が必要な「労使協定」について、作成や添付の際に押さえておくべきポイントを以下でご紹介します。適正な協定の準備を進め、スムーズな報告提出に備えましょう。
労働者派遣事業報告書の提出義務
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提出期限:毎年6月30日まで。
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報告内容:直近の事業年度の実績および6月1日現在の状況を「労働者派遣事業報告書」(様式第11号)で報告。
労使協定の添付に関するポイント
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労使協定の添付:労使協定方式を選択している場合、6月1日時点で有効なすべての労使協定を2部添付。
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賃金額の確認書:協定の有効期間中に一般賃金の額が変更された場合、派遣労働者の賃金が変更後の一般賃金額と同等以上であることを確認した書面を添付。
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協定対象者の人数記載:派遣労働者および日雇派遣労働者の賃金額(第3面~第5面)と実人数(第7面~第9面)には、協定対象の派遣労働者を「内数」で記載。
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職種の記載範囲:記載する職種は、報告対象期間中有効であった労使協定の範囲内であることが原則。
労使協定作成時の注意点
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評価制度の明確化:派遣労働者の職務内容、成果、意欲、能力または経験などを公正に評価し、その向上があった場合に賃金が改善される仕組みを設ける必要があります。
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退職金制度の明記:退職金の支給方法について、以下のいずれかを労使で選択し、明記する必要があります。
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退職金制度に基づいて支給する方法
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退職金の費用を毎月の賃金等で前払いする方法
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中小企業退職金共済制度や確定拠出年金などに加入する方法
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端数処理の方法:一般賃金の額や協定対象派遣労働者の賃金を算出する際の端数処理方法(切り上げ)、適切に処理する必要があります。
さいごに
派遣労働は柔軟な働き方ができる一方で、雇用が不安定で弱い立場に置かれやすいという課題があります。そのため、事業報告書を通じて、派遣スタッフの契約状況や雇用の安定、安全・衛生、キャリアアップ教育の実施状況などを詳細に報告し、行政が実態を把握・監督する仕組みとなっています。
また、派遣元事業主が法令を遵守しているかどうかを確認する意味でも、報告書の提出はコンプライアンスの観点から非常に重要です。提出を怠ったり虚偽報告を行った場合には、行政指導や最悪の場合は事業許可の取消しといった厳しい罰則が科されるため、正確かつ期限内の対応が強く求められます。
一方で、報告書の作成には多くの情報を集め、細かい点まで正確に記載する必要があり、派遣元事業主にとっては事務負担が大きいと感じます。しかし、これによって派遣労働者の権利や待遇が守られ、業界全体の健全化につながる点は意義深いと考えます。
関連記事:2024年5月20日 労働者派遣事業報告書提出についてのポイント
参考:山口労働局「労働者派遣事業報告書」~「労使協定」添付のポイント~
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