ある配送会社の元運転手2人が、残業代の一部が未払い
として割増賃金等の支払いを求めた訴訟があり、東京地裁
は、制裁金に当たる付加金も含め、計約215万円の支払い
を命じました。
具体的には、次の内容が特徴的です。
1.2人は都内営業所において、IDカードで出退勤時刻を
管理していましたが、「記録上の時間より早く出勤し、遅く
帰宅する日もあった」と主張した。
2.2人が通勤に使っていた高速道路の料金所通過記録と
記録上の出退勤時刻に差があった。
3.このことから、東京地裁は、記録上の時間は必ずしも
実際の勤務時間を反映しておらず、営業所の勤務時間の
管理が適切ではないとした。
●考察
この判例からも残業時間数は、形式ではなく、実態の把握が
とても大切であることがわかります。
つまり、今回の判例のように、ICカードで社員の労働時間を
記録していても、実際の労働時間が異なれば、適切に労働
時間管理ができていないとみなされるリスクがあるということ
です。
現在、ワークライフバランスが叫ばれており、過労について
厚生労働省が厳しく指導していますので、残業時間の抑制を
図る企業も多い筈です。
ただ、一方で、「残業をするな」と社員に命じても、抱えている
仕事量が減らなければ、所定労働時間内に業務を完遂でき
ないこともあるでしょう。
その場合、やむを得ず、記録上は残業をしていないこととし、
実際は残って仕事をする、または自宅に持ち帰って仕事を
するといった状態が生じていても不思議ではありません。
これは、いわゆる賃金不払い残業ということになります。
その結果、会社では気付かないうちに、こうした残業代不払い、
場合によっては過労による健康障害といった問題が発生する
ことが懸念されます。
今一度、社内で管理している労働時間の記録と実態について
確認されてみるといいと思います。