くらし・経済

なぜ今さら働き方改革なのか

仕事や暮らしを大きく変えることになる「働き方改革」。

その具体策を、短期間でまとめることを目指す、「働き方改革実現会議」が、官邸主導で始まっています。

焦点は、なんといっても、先進国最悪レベルと言われる、長時間労働をどう是正するか、つまり残業時間に、ハッキリと上限を決めて、制限することができるか?

そして、正規、非正規の賃金格差を縮めるための同一労働・同一賃金に近づける道筋をどう描くのか、これまでの労働政策の決定方法を大きく変えようという狙いが見てとれます。

年間の労働時間ですが、20年前には1900時間余りだったものが、直近では、1600時間台まで減っています。

長時間労働問題は、着実に改善に向かっている、ようにみえます。

ところが、これは、パートタイム労働者を含めた統計となっていることに留意しなければなりません。

次に、パートタイムをのぞいて、男性労働者だけを見ると、年間ほぼ1800時間余りで、ほとんど横ばいです。

先進国で最悪レベルといわれる、日本の長時間労働の正体はここに潜んでいます。

そして、これが、働きすぎて死んでしまう、過労死問題にもつながっているわけです。

米国では過労死に相当する用語が存在しなため、「KAROUSHI」と訳されるようです。

日本も、労働時間の規制を見直して、例えばヨーロッパ諸国のように、残業は何時間までと、具体的に厳しく上限を設ける、ということも含めて、36協定を見直そうという検討が始まったようです。

問題は、その上限をどういう水準にするかです。例外も多くしておきたい経営側と明確な労働条件の改善を

求める人たちとの間で、意見が対立することは必至でしょう。

均等待遇である同一賃金に近づけるためには、まず、非正規の賃金を引き上げる必要があります。

その上で、格差是正を本格的に行おうとすれば、正社員だけが、在職年数と共に、賃金が上がっていくという、年功序列型賃金、いわゆる年功賃金を見直すことが避けられません。

これには、正社員の側から抵抗が出ることが予想されるでしょうし、難しい調整が必要になります。

労働政策は厚生労働省の所管です。

つまり、今回のように、労働政策を大きく転換させようとすれば、まず、厚生労働省で専門家による検討会を設けて、話し合い、それを、さらに労働政策審議会(労政審)にあげて議論することが必要なのです。

今回の働き方改革実現会議は、政府の代表である、総理大臣みずからが議長をつとめ、労働者代表のトップである連合の会長と、使用者側代表のトップである経団連会長が参加しています。

従来の「 公・労・使」 ではなく、「 政・労・使 」という、新たな3者の枠組みで労働政策の大転換を進めるということになっているのですが、スムーズに進むのかどうなのでしょうか。

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